相続した実家を売るときの税金|取得費加算と空き家の特例
こんにちは。なえむら総合会計事務所、公認会計士・税理士の苗村です。
実家を相続したものの住む予定がなく、「売ろうと思うけれど、税金はどうなるんだろう」と考えていらっしゃるかもしれません。相続のときに相続税を納めたのに、売るときにまた税金がかかるのか——と、釈然としない気持ちになるのも自然なことです。
結論から言うと、売却して利益が出れば譲渡所得税がかかります。ただし、相続した不動産の売却には税負担を軽くできる特例がいくつか用意されていて、使えるかどうか、いつ売るかで手取りが大きく変わります。この記事では、その全体像を整理します。
売却の税金は「利益」にかかる
不動産を売ったときの税金は、売却額そのものではなく利益(譲渡所得)にかかります。
譲渡所得 = 売却額 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費は「その不動産をいくらで買ったか」、譲渡費用は仲介手数料や測量費などです。相続した不動産の場合、亡くなった方が買ったときの金額と取得時期をそのまま引き継ぎます。親が3,000万円で買った家なら、取得費は3,000万円です。
税率は所有期間で変わります。相続の場合は亡くなった方の所有期間も通算するため、親が長く住んでいた実家なら、ほとんどのケースで税率の低い長期譲渡所得(所得税・住民税あわせて20.315%)になります。
買った金額が分からない場合
古い実家では、購入時の契約書が見つからないことがよくあります。取得費が分からない場合は売却額の5%を取得費とみなして計算するため、利益が大きく出たことになり、税負担が重くなりがちです。実家の権利証や契約書、住宅ローンの資料は、処分せずに探しておいてください。
相続税を納めた人は「取得費加算の特例」
相続税を納めたうえで売却する場合は、納めた相続税の一部を取得費に上乗せできる特例(取得費加算の特例)があります。取得費が増える分、利益が圧縮されて税金が減る仕組みです。
この特例には期限があります。相続税の申告期限の翌日から3年以内(亡くなってから約3年10か月以内)の売却が条件です。「いずれ売るつもり」の不動産があるなら、この期限を意識してスケジュールを組むと税負担が変わります。
空き家になった実家は「3,000万円特別控除」
親が一人で住んでいた家が相続で空き家になった場合、要件を満たす売却なら譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(空き家の譲渡所得の特別控除)。利益が3,000万円以内なら税金がゼロになる、効果の大きい制度です。なお、家を相続した人が3人以上いる場合は、控除額は1人あたり2,000万円になります。
主な要件の概要は次のとおりです。
- 亡くなった方が一人で住んでいた家であること(老人ホーム入居のケースも一定の要件で対象)
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家屋(旧耐震基準の時期のもの)で、マンションなどの区分所有建物でないこと
- 相続から売却まで、貸したり住んだりしていないこと(空き家のままであること)
- 相続から3年目の年末までに売却すること
- 売却額が1億円以下であること
- 家屋を耐震改修して売る、または取り壊して売ること(買主側が翌年2月15日までに行う場合も対象になる扱いがあります)
また、この特例は制度そのものに期限があり、2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象です。
要件が細かく、1つ欠けると使えません。特に「昭和56年以前の建築か」「一人暮らしだったか」「取り壊しか耐震か」の3点で適用の可否が分かれることが多いため、売却の話を進める前に確認しておくのが安全です。
取得費加算と空き家特例は併用できません
2つの特例はどちらか一方の選択です。相続税をいくら納めたか、譲渡益がどれくらい出るかによって有利な方が変わるため、売却前に両方で試算して比べます。
なお、ご自身が住んでいる家を売る場合の「マイホームの3,000万円特別控除」は、これとは別の制度です。相続した実家に住んでから売るケースなどでは、どの制度に当てはまるかの整理が必要になります。
売却までの段取り
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相続登記を済ませる
名義が亡くなった方のままでは売却できません。まず相続登記が前提です。詳しくは相続登記の義務化とは?をご覧ください。
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使える特例と期限を確認する
取得費加算(約3年10か月)、空き家特例(3年目の年末)など、期限から逆算して売却時期を考えます。
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取得費の資料を探す
購入時の契約書・領収書があるかないかで税額が大きく変わります。
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売却の翌年に確定申告
特例は確定申告をして初めて適用されます。売却して終わり、ではない点に注意してください。
相模原市の実家の売却・住み替えに
相模原市南区・東林間のあたりは戸建ての多い住宅地で、「相続した実家をどうするか」というご相談が少なくありません。当事務所(東林間駅東口徒歩1分)では、相続税申告から売却時の特例の判定・譲渡所得の確定申告まで、一連の税金をまとめてご相談いただけます。相続の段階の土地の評価については相続した土地の評価方法もご覧ください。
まとめ
- 売却の税金は利益(譲渡所得)にかかる。相続不動産は親の取得費・取得時期を引き継ぐ
- 契約書が見つからないと取得費は売却額の5%扱いになり、税負担が重くなりやすい
- 相続税を納めた人は、約3年10か月以内の売却で取得費加算の特例が使える
- 旧耐震の空き家は、要件を満たせば3,000万円特別控除。取得費加算とは併用不可
- 特例の適用には売却翌年の確定申告が必要
「売るかどうかまだ決めていない」段階でも、期限のある特例が絡むため早めの確認をおすすめします。当事務所の相続に関する初回無料相談では、売却した場合の税金の見通しもあわせてお伝えできます。


