相続とは?手続きの流れと相続税の基礎を税理士が解説
目次
はじめに
こんにちは。相続のお手伝いをしている、なえむら総合会計事務所の苗村(公認会計士・税理士)です。
ご家族が亡くなって、はじめて「相続」と向き合う——そんなとき、「そもそも相続って何をするの?」「なんだかむずかしそう…」と身構えてしまいますよね。専門用語も多く、不安に感じるのは自然なことです。
でも、ご安心ください。相続は、ポイントを順番に押さえていけば、決して怖いものではありません。本記事では、相続とは何かという基本から、相続人の範囲、財産の中身、手続きの期限、相続税の考え方までを、はじめての方にもわかるように整理しました。
相続でまず押さえるべき3つのこと
細かい手続きに入る前に、まずはこの3つだけ覚えておいてください。
相続の基本となる3つのポイント
- 相続は「亡くなった日」に自動的に始まる。手続きをするしないにかかわらず、財産も借金も相続人へ引き継がれます。
- 手続きには「期限」がある。相続放棄は3か月以内、相続税の申告は10か月以内など、過ぎると不利になる期限があります。
- 相続税がかかる人は全体の約1割。多くの方は基礎控除の範囲内ですが、判断には正しい計算が必要です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続とは:財産と義務を引き継ぐこと
相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産に関する権利・義務を、残されたご家族(相続人)が引き継ぐことをいいます。民法でも「相続は、死亡によって開始する」と定められており、特別な手続きをしなくても、亡くなった瞬間に相続は自動的に始まります。
ここで大切なのは、引き継ぐのはプラスの財産だけではないという点です。
プラスの財産
現金・預貯金/土地・建物などの不動産/株式・投資信託/自動車・貴金属 など、お金に換算できる財産
マイナスの財産
借入金・ローンの残債/未払いの税金・医療費/連帯保証人としての地位 など
借金のほうが多いケースもあるため、まずは財産の全体像を早めに把握することが大切です。
生命保険金は「別枠」で考える
受取人が指定された生命保険金・死亡退職金は、遺産分割の対象外(受取人固有の財産)ですが、相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象になります。一方で「500万円 × 法定相続人の数」までは非課税です。
誰が相続人になる?法定相続人の範囲と相続分
民法では、誰が相続人になるか(法定相続人)と、その取り分の目安(法定相続分)が決まっています。配偶者は常に相続人となり、それ以外の方は次の順位で決まります。
| 順位 | 相続人 | 配偶者がいる場合の法定相続分 |
|---|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 | — |
| 第1順位 | 子(亡くなっていれば孫) | 配偶者1/2・子全員で1/2 |
| 第2順位 | 父母などの直系尊属 | 配偶者2/3・父母で1/3 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっていれば甥姪) | 配偶者3/4・兄弟姉妹で1/4 |
上の順位の方がいる場合、下の順位の方は相続人になりません。たとえばお子さんがいれば、被相続人の親や兄弟姉妹は相続人になりません。
法定相続分はあくまで「話し合いがまとまらないときの基準」です。相続人全員が合意すれば、異なる割合で分けることもできます。この話し合いを遺産分割協議、合意内容をまとめた書面を遺産分割協議書といいます。
相続の3つの選択肢と「3か月」の期限
財産(借金を含む)を調べたうえで、相続人は次の3つから選べます。
単純承認
手続き不要
プラスもマイナスも、すべてそのまま引き継ぎます。何もしなければこれになります。
相続放棄
3か月以内/家庭裁判所
はじめから相続人でなかったことに。借金が多いときの選択肢です。
限定承認
3か月以内/相続人全員で
プラスの財産の範囲内でだけ借金を返します。全員での申述が必要です。
相続放棄・限定承認は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ手続きします。この期間を過ぎると、原則として借金も含めて引き継ぐ「単純承認」とみなされる点に注意してください。
相続手続きには「期限」がある
相続後の主な手続きには、それぞれ期限が決まっているものがあります。何から手をつければよいか分からない場合は、まずこの時系列を意識してください。
| 期限 | 手続き | 内容 |
|---|---|---|
| 7日以内 | 死亡届の提出 | 市区町村の窓口へ。多くは葬儀社が代行します。 |
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の判断 | 借金が多い場合などはこの期限までに家庭裁判所へ。 |
| 4か月以内 | 準確定申告 | 亡くなった方の所得税の申告(必要な場合)。 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付 | 基礎控除を超える場合に申告と納税が必要です。 |
| 3年以内 | 相続登記(不動産の名義変更) | 2024年4月から義務化。怠ると10万円以下の過料も。 |
相模原市にお住まいの方へ
相模原市内の不動産の相続登記は 横浜地方法務局 相模原支局、相続放棄や遺言書の検認は 横浜家庭裁判所 相模原支部、相続税の申告は 相模原税務署 が窓口です。提出先を間違えると手続きが進みませんので、最初に確認しておくと安心です。
手続きの順番と中身は親が亡くなったら何をする?相続手続きの流れと期限で時系列に沿って詳しく解説しています。
相続税はかかる?基礎控除の考え方
「相続=相続税がかかる」とイメージされがちですが、実際に相続税の対象となるのは亡くなった方の約1割です。相続税には基礎控除という非課税の枠があり、遺産がこの範囲内なら申告も納税も不要です。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば相続人が配偶者と子ども2人の合計3人なら、基礎控除は4,800万円です。正味の遺産がこれを超える場合に、相続税の申告が必要になります。
国税庁の統計では、相続税の課税対象となったのは亡くなった方の約9.9%(令和5年分)でした。
自分のケースで相続税がかかるか、基礎控除はいくらかは、相続税はいくらからかかる?基礎控除と申告の要否で詳しく解説しています。
相談で多い勘違い
相続では、思い込みで手続きを誤ってしまうケースが少なくありません。相談の現場でよくお見かけする例を挙げておきます。
「うちは財産が少ないから相続は関係ない」 財産の多い少ないにかかわらず、相続は必ず発生します。自宅などの不動産があるだけでも、遺産分割や相続登記が必要です。
「相続放棄すれば自分はもう無関係」 ご自身が放棄すると、相続権は次の順位の方(親や兄弟姉妹など)へ移ります。親族間で連絡を取り合う必要が出てきます。
「期限はまだ先だからゆっくりで大丈夫」 相続放棄の3か月、相続税の10か月は、思いのほか早く来ます。戸籍や財産の書類集めには時間がかかるため、早めの着手が安心です。
本記事では、相続の基礎を以下のポイントで解説しました。
- 相続は亡くなった日に自動的に始まり、財産も借金も引き継がれる
- 相続人の範囲・取り分は民法で決まり、話し合い(遺産分割協議)で調整できる
- 相続放棄は3か月、相続税の申告は10か月など、手続きには期限がある
- 相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、対象は約1割
相続は、ご家族の状況や財産の内容によって取るべき手続きが大きく変わります。「何から始めればいいか分からない」「相続税がかかるか不安」という段階でも大丈夫です。当事務所では相続に関する初回無料相談を承っております。相模原市を中心に神奈川県全域の皆さまをサポートしておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。